7日間ブックカバーチャレンジ ③(「ハーメルンの笛吹き男」阿部謹也)

 大学へ入り、専攻は西洋史にした。
 一学年、10名である。
 西洋史と言っても範囲は広うござんす。
 10人の学生が勝手な国と時代を決める。専門課程の先生は4人。イタリア近代史、ドイツ中世史、ドイツ現代史、イギリス近代史が専門の先生がいて、教養からフランス近代史、ローマ史の先生が手伝いに来られる。
 それ以外をテーマにするなら他校から専門の先生を呼んでくださる。まことに贅沢な環境だったが、当然、勉強は厳しかった。
 私は最初、ロシア革命史をしたいと申し出た。まだ大学闘争の残り火がある時代だ。随分沢山の先輩が基礎を叩き込むため勉強会を開いてくださる。たちまちマルクス・レーニン漬の日々がやってきた。ところが、これがどうにも身につかない。体でわかる、ということがない。ストレスを抱え込み、あるとき先輩らの恩を仇で返すようなちゃぶ台返しをやってしまった。
「ロシア革命はやりません」
「ではこのあと、どうするのだ?卒論のテーマ選定までそう日はないぞ」
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 図書館にこもってあれこれ本を漁った。
 そこで阿倍勤也先生の「ハーメルンの笛吹き男」と出会った。
「こんな風に書きたい」
 と思った。
 ファンレターを出し、面会を申し出たら会ってくださると返事をいただいた。
 東京のご自宅まで押しかけ、2時間ほど卒論のテーマについてご相談をした。
「それをしなければ死んでしまうというテーマを見つけなさい」
 そう言われた。
 阿部先生の恩師である上原専禄さんの言葉であると。
 そんな厳しい覚悟などなかった私はうちのめされたが、卒論は阿部先生の守備範囲であるドイツ中世史にしようと決めて帰った。
 私は結局、研究者への道には行かなかった。就職を決めたことを手紙で報告すると、どこにいても研究は続けられるとお返事をいただいた。

 その気持ちだけは今でも残っている。
 大事な恩師のおひとりである。

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