7日間ブックカバーチャレンジ+(「ジャン・クリストフ」ロマン・ロラン)

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 高校生になってすぐ親しくなったのが作曲家を目指していたKである。
 ほぼ毎日、帰りが一緒だった。下校道の途中で楽器店に入り、
「これ知ってるか?」
 とわたしに言ってはショパンやベートーヴェンやモーツアルトを弾いた。

 ある日、当時のわたしには騒音の塊にしか聞こえない曲を演奏した。
「プロコフィエフの6番」
 とKは言い、しばらくしてリヒテルがカーネギーホールで弾いたLPを貸してくれた。
 素人なりに技術的に高度な曲と感じたので、
「ピアニストにならんのか?」
 と聞いたら、
「もう遅い」
 と答えた。

 生涯の友となったクラシック音楽の世界へわたしを導いてくれたのはKである。彼の話についていくために家の本棚から見つけたのがロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」だった。
 当時、河出書房から出版されていた「世界文学全集」にあった。
 父は全集を揃えるのが好きだった。ほかに文藝春秋の「現代日本文学館」。中公から出ていた「世界の歴史」、「日本の歴史」、「世界の名著」。山岡荘八の「徳川家康」などが並んでいた。揃えてもほとんど読んでいなかった。わたしもその血をひいている。

 この小説に登場する様々な音楽論を読んでわたしはKに追いつこうとした。
 音と言葉に橋を架けたい。
 そう思うようになったのは「ジャン・クリストフ」を読んだからだ。

 ときに性急にわたしはロランの言葉で音楽を論じた。その悪影響も長くわたしに残った。精神性を重んじるあまり音楽の情緒や美を軽んじた。
 ご存じのようにクリストフのモデルはベートーヴェンである。
「苦悩を通じて歓喜へ至る」
 克己的精神のない音楽にロランは冷たかった。ロラン、というよりクリストフか、のブラームス嫌いや価値判断を真に受け「聞かずぎらい」を作ってしまった。損をした。回り道をしたと思う。だが「ジャン・クリストフ」が偉大な作品であったことは間違いない。

 もっとも感動した箇所は今も覚えている。

 パリで孤独の淵にあったクリストフが親友となるオリヴィエと会ったあとでつぶやく。
 それは音楽とは関係がないのだが、、、

 「友だちがひとりある」

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