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zoom RSS 歩け、歩け〜北・山辺の道

<<   作成日時 : 2011/02/26 20:23   >>

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 その一角だけがシンと冷えた嵐気に包み込まれていた。

 奈良市の南に位置する円照寺への参道を歩いていたときだ。

 参道は杉と檜の木立に囲まれ整然と走っている。その途中に檜の香りが、より濃く漂う空間があった。背筋にヒヤリとした電流が流れた。

 「ここまで来ると寒いやろ」

 と、連れだって歩いていた懐手のおじいさんに声をかけられた。

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 春日大社、新薬師寺、白毫寺を経て円照寺が終点。近鉄の配布するガイドマップ「北・山の辺の道@」、9キロのコース。

 円照寺は1669年に後水尾天皇の息女、梅宮によって開山されたという門跡寺である。俗に山村御殿の名がある。全く知らない寺院である。ガイドマップに導かれなければ一生、訪れる機会はなかっただろう。

 素晴らしい佇まいであった。

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 山門には「不許酒肉五辛入境内」の碑が。

 思わず、後ずさりした。

 「法然院にもあったよ」と嫁さんが云う。法然院の貫主、橋本峰雄先生の授業は受けたことがあった。呑めそうな印象の先生だった。法然院でその碑をみたときには意外の感があった。わしもその当時はこういう文字をみても、たじろくほど呑んではいなかった。

 茶会か生け花教室でもあったのか、老婦人が数人、山門から出てこられた。「ここは公開されていませんが、本堂前まではかまいませんよ」と親切に教えてくださった。敷石が美しく置かれている。参道、山門、敷石と順に気持ちが澄んでいくような配置になっているのが心憎い。写真だけ撮って山門から出た。

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 まだ時間があるので「うそのような静けさ。このあたり人家とてなし。ましてや人にあうことすらまれ。まさにタイムトンネル」とマップに記載されていた正暦寺へ向かう道を歩くことにした。

 確かにアスファルトの道路を歩いていたときは別として、山道に入ってからは人にも犬にも会わなかった。ひたすら単調な登り道が続く。軽自動車も通れないほどの道である。一週間前の雪がやっと溶けた様子でひどくぬかるんでいる。ようやく峠を越えたら、一気に正暦寺の正面になだれ落ちるような下り坂が待っていた。その先、本堂へはかなりの階段を登らなければならなかった。かなりの汗をかいていた。すでに4時を過ぎ冷え込みが襲ってきた。

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 本堂は既に閉まっていたのだが尼さんがわしらに気づいて、ご親切にもまた開けてくださった。何の知識もなしに訪問したのでご本尊が薬師如来であることも知らなかった。新薬師寺と正暦寺。一日に二体、薬師如来を拝んだわけである。「生活習慣病予防で歩いてますねん」と言上した。

 本堂を辞して靴を履いていると法螺貝の音が響きわたった。すでに深山の趣である。かつてこんな場所にある寺までが平重衡の南都焼き討ちの害にあったとは信じがたい。

 「紅葉の季節は絶対すごいと思う」と嫁さんが云う。悲しいかなシティーボーイのわしは花鳥風月に疎い。今日も歩きながら杉と檜の見分け方を教わったが、間違ってばかりいた。この辺りの林は杉と檜が混ざり合って生えている。花粉症でないわしには、識別する嗅覚も必要性もないのである。

 代わりに、わしが境内で見つけたのは「日本清酒発祥之地」という石碑であった。

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 なかなか話せるお寺ではないか。

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